ダンス スポーツ 筋トレ バレエ 総合情報ブログ~カーテン・ライン

バレエの種類と 歴史 バレエ振付家 世界の著名バレエ団 舞踊解剖学 筋トレ アスレティック・トレーナーとストレングス・コーチ:専門家の助言 ダイエット バレエ用語 ポアント トウシューズの選び方 新体操
                                               
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[31] コーチの罵声 Date:2003-01-31 (Fri)


 新体操で新しく移ったチームは、コーチの罵声が体育館中に響き渡る。
 他所から見学に来たコーチから、自分が叱られたみたいに体が硬直する。
目をむき出してそれは身がちぢむように恐ろしい。
あんなんで良くみんないじけずに上手になると感心する、と耳打ちされていた。

 入会の時も母親(私)がいると怒鳴れないし叱れない、とコーチに言われた。いや、どんどんやってください。どんなに酷くても私より酷いことはないでしょうから子供はきっと平気です。と言った。

...でも、怒鳴られたところを見たことがなかったので、わざわざ二人のコーチに遠慮なくやってください。私は娘が往復ビンタをされるのだけはちょっと必要ないと思うので歓迎しませんがお尻をぶっても大声で叱り飛ばしても全然構わないですし、なんとも思いませんから、と宣言した。
二人ともあはは、と笑っていたが叱る風は一向にない。

 ここ二日ばかり別の仕事の振り付けで忙しくて子供だけ体育館に置いてとんぼ返りしている。そうしたら途端に怒鳴り散らされたらしい。
迎えに行ったら
「今日はミエルダだって言われた」と肩をすぼめていた。
へえーーー、凄い!ちょっとおかしくなる。母親にすぐに言い付ける年頃の子供にこんな罵声は普通、浴びせないのだ。
ビクトリアっていう人は勇気ある。

 昨日はコーチの二人ともに更に激しく言われたらしい。
ジエスチャーも鮮やかに真似してこんな風に二人に言われたと娘が報告する。

TAMAAAAARAAAA!!!!
Cuantas veces te tengo que decir!!!
Lo que estas haciendo es una MIERDA,de verdad que es una
MIEEEERDAAA!!!
(訳/タマァァァラーーーー!!!何度言ったらあんた分かるのよ!
そんなのは糞よ、本当の糞演技よ、そんなのは!!!)

するともう一人はうん、うん、とうなずき、

Estoy diciendo ya 40000veces,pero no lo hace!
(もう4万回も言ってるのにちゃんとやらないんだもの!)

で、これを受けて主任コーチが本当に本当に本当に糞だ、と重ねて言ったと。

あははは....言われちゃったねぇ、そうか!

子供はちゃんとした先生なのにあんな汚い言っちゃいけない言葉で怒鳴るなんて初めて聞いた、大人なのに、て驚いている。
どうしてなの?ママ?

いいのよ、スポーツ系なんだから。一生懸命直してあげたいと本気で心配しているとああなるんだってば。あれでいいの!何も言ってもらえなくなった時に泣かないといけないんだってば。

どれ、やってご覧。何がまずかったって?
Y字バランスでプロムナードするのに膝が曲がってしまうのだ。

軸足、軸足の事忘れちゃダメだってば。上がってる方はただの飾りだから軸の事だけ頭に入れておく。ずっと。かかとのアンデオールに気持ちを集中する。回ろうとしないでレレべ(ルルべ)になろうという気持ちで行けば膝が曲がらない。
タミィ、こういうものをやる時はどういう気持ちでやるのかが分かっていないと絶対にできないのよ。

あの鬼コーチと、説明派の私のフオローでなんとか行けるかな、と思った。

...しかしビクトリアの罵声は凄い。声がとても感じのいいアルトなので聞いていると耳に心地良かったりする。録音して行って日本の集中レッスンで適所に流すといいかもしれない。現地で取りたての罵声ですって....迫力あるかも。

--------------------------------------------------------------------------------
[30] ウォーミング・アップとダウン Date:2003-01-26 (Sun)

いつも娘の話題で恐縮だが、これは舞踊やスポーツを始める適齢期のモデルを観察しながらの、私の初の実験記録であるのだから皆さんもそういう視点で勉強なり参考にしていただきたい。

 娘が入ったチームでは私はいずれ振り付けなどに参加するのだが、今は新体操全般を自由に勉強させてもらっている。つまり選手と一緒に訓練している。

どうも、おかしいとこの2週間ばかりずっと思い続けているのだが、このチームは非情に訓練プログラムがまずい。

アンダルシア最強を誇るチームなのだから、思い違いかな、と(そんな訳ないのだが自分の専門でないことには断定はすぐに下せない)検証していたのだけれど、十分なウオーミングアップもさせないでいきなりアクロバット的な背骨にうんと負担のかかるような技に入ったりして「あっ!!」と声にならない声を飲みこむ。

終わる時も申し訳程度のダウンで、あんなに偏った技の訓練を続けた後なのに、これでは年月と共に支障が出るのではないかと心配している。
間違った訓練というのは、微量のヒソを盛るように体を蝕んで行く。
私は新体操は素人だが、長年の経験と実績でこういうことには素人ではないから、目の前で子供が毒殺されて行くのをじっと見ている無力に煩悶している。
どんなチームにも欠点というのはあるものなのだ。
そして
どんなトレーナーもコーチも、母親に口出しされるのは嫌に決まっている。
踊りでもそうだが、昔バレエをかじりました、みたいなうっとおしい母親につべこべ言われることほどかなわない事はない。
私の立場は微妙だ。
かなりうっとおしい母親ということになる。
チームでは、自分の子供以外の全ての選手に助言していいことになっている。
これはつまり自分の子だけはダメ、と釘刺されているに他ならない。
小さい子供達の基礎訓練をいっそ受け持ってもいいのだけれど、受け持てない約束だからと自分の子供はあっちで毒殺されてしまうのは辛い。

....はて、うまい外交手段はないものか。

ということで、今日の差し迫った議題はウオーミングアップです。レッスンが始まる前に少し汗ばむくらいになっているのが本当だ。だから稽古場に急ぐ駅から始めないといけない。早歩き。下にはなるべくもう、半分くらいはレッスン着を着込んでいて着替えに手間取らずにスタジオ入りしたら続けてアップする。

ウオーミングダウンも、使った筋肉はよくほぐし、伸ばし、腰のストレッチも欠かさずにやらないといけない。その場でできない場合は夜寝るまでに必ず暇を作ってやる。

お肌の手入ればかりに時間をかけても全身がおろそかになっていたら美容効果がないのと同じだ。
あなたは三面鏡の前に座って顔のアップしか見ていないかも知れないが、人の印象というのは何十メートルも離れた全身から来るものだ。
踊り手の常識としてそれを忘れてはならない。


--------------------------------------------------------------------------------
[29] バレエ教師の資質について Date:2003-01-20 (Mon)


 娘のバレエ教師が友達のディエゴになったのは最近の書物の中で言っている。先週、彼とちょっと立ち話していてまた、教師の資質について考えさせられた。

 ここで言う教師とは、その専門分野での一流の芸を確立している人のことで
かつ生徒は選り抜きでちんたらしていない、鬼気迫る向学心に燃えている世界のトップレベルの心がけの人達を教える場合についてだ。(侮辱していないですよ、趣味の人を。そういう趣味の教えと、何かにどうしてもならないと!と思いつめている人は違うのだから教師も違うわけです。趣味の人に苛烈に仕込めばみんな地獄に落ち込んでやめてしまう)

で、こういう教師を私もディエゴも三人は共通して知っている。

一人は王立舞踊学校のバレエ科の教授で、つい最近まで私の次女が習っていた。この人は私やディエゴには素晴らしい教師だったけれど、子供相手、王立の専任公務員となると態度が違ってしまう。
世界に飛び出せる実力があったのに容姿がプリンシパルには届かなかったり、色々と夢破れてしまっている。
毎日子供なんか相手にするのが嫌で仕方ない。
誰のことも育てたくなく、短い周期で鬱病になるらしい....

もう一人の私達の共通した教師は、モーリス・ベジャールの舞踊団で早くから認められて世界をかけめぐった実に実に素晴らしい、本当に目を洗われるような実力のダンサー。でも、この人も苦渋に満ちていて教師としてはどうかな、という日が多い。

卓抜していても、クラスに臨んでその実力を発揮しないばかりか、負の力が働く人はどうも教える立場としては長く続かないという結論に到る。

 ディエゴを見ているとクラスではテープもかけない。巻いたり戻したりする時間すら惜しいと言うのだ。この辺は私と似ている。でも私の場合は素人の愛好家が相手だから曲やリズムのCDがないと彼女達がイメージしにくい。(だから誰かレッスンの前に素早くセットして欲しいってよく叫ぶ。集中レッスン間近です。お忘れなく。)

ディエゴはレッスンに遅れて来ると入室を許可しないとまで宣言する。相手が6才でもだ。そのくらいに鬼気迫っている。
注意されて怒鳴られて泣かないようにね。何も言ってもらえない日が続いた時こそ家に帰って泣くべきなんだよ、と言う。

私はこう言って生徒に諭す気持ちは良くわかる。

まず、習う立場の心構えと常識を植えつけてやっているのだ。
踊りを習うには習うほうの基本の心構えというものがある。
これは長い舞踊生活の第一歩なのだ。
こういうことが出来ていないと精進することも叶わない。
技術ばかりでなく、というあれはここにも適用されるのだ。
資質に恵まれた教師に出会った時、自分の方に謙虚で聡明な資質がちゃんとあるか反省してみないといけない。

子供が相手の時にはこのへんから教えないといけないな、と思う。
大人が相手の場合は何をか言わんや、である。

--------------------------------------------------------------------------------
[28] バレエーレベルを求めて Date:2003-01-16 (Thu)

移籍については大変だった。
それはまたいずれ機会があった時に。

翌日から新チームに移って毎日3時間の訓練を受け始めている。
さすがアンダルシア八県で最強と言われているだけあって選手の鍛え方が
まるで違う。どんなに小さな子供も私語というものをしないでこんなに長い時間一心に懸命におさらいしている。
ここにはスペインチャンピオンになった11才の選手を始め、これと紙一重という実力の選手達が目白押しなのだ。

やはりこのチームにもバレエ講師が居て徹底的な解説と訓練をしている。
ディエゴというこの男性は私のバレエ友達なのだ。
いつも一緒の朝のレッスンではそんなにずば抜けてどうという人とも思えなかったけれど、選手を扱うと彼はこの世界でぴか一の異名を取っていると評判だった。
昨日、間近で指導の逐一を見ていて納得してしまった。
指導は懇切で詳細を極め、そしてものすごく厳しい。

娘がやっとあの、王立舞踊学校のわんちゃん猫ちゃんの愚から脱出して
懸命にディエゴを凝視している姿を見て、胸が熱くなった。
お友達の娘だからディエゴも少しは情をかけてくれて、娘を直しながらちょっと私を見たりする。「いい感じだよ」と目で言ってる。
「お願いね」と見返す。

6才から8才くらいまででも粒よりの子達がずらっと15人は並んでいる。
みんなあどけないかわいい顔をしていても水を打ったように真剣に先生の言う事を聞いている。

ああ、これでなくては!と思う。
これこそやっと私が求めていた環境だと思った。ついにセビージャにはこういうレベルが求められないのでは、と苦しんで
イギリスやニューヨークに問い合わせまでしていた。
ウクライナやロシアからコーチを招聘しようとさえ考えた。
体育館を建ててチームを興そうとまで思いつめた。

大切な年月というのはお金では買えない。
環境がなかったら何を質に入れても買おうと思った。

最後は何にならなくてもかまわない。
結果なんかどうでもいいのだ。

こういう専門に生きていて、娘がいて、彼女に舞踊への十分な憧れと情熱と素質があったら思い通りのカリキュラムを施す、これだけが自分の使命だと思っている。
新体操は一つの手段だ。子供が求めるレベルがセビージャの舞踊にないからだ。体はともかく、心は柔軟に飽くことなく求めて、努力しないといけない。
そのためには周りにあるどんなものも利用する。
磁石のような情熱。結局これがあるかないかが才能よりも大切なのじゃないかと考えたりする。



--------------------------------------------------------------------------------
[27] いよいよ退学、退会、移籍 Date:2003-01-13 (Mon)


この金曜にアンダルシアで最強と言われた新体操チームのコーチから娘の移籍を持ちかけられた。身体条件が優れていると三人のコーチから評価されたのは光栄の至りだけれど、今所属しているチームには当然宿敵のようなライバルチームなのだ。

 月曜から徹底的に娘の訓練に入りたいと言う主席コーチの申し出は、有無を言わさない強さだ。

私は一晩思い悩んだ末に、昨日あらためて会見してこの春のアンダルシア選手権が終わるまで移籍は待って欲しいと申し入れた。
あちらのチームでは娘にとても期待しているのだ。わずかあと2ヶ月のことだ。お世話になった人達に後ろ足で砂をかけるような真似はしたくない。
選手権が終わってからなら...

案に反して、これは一蹴のもとにはねつけられてしまった。2ヶ月なんてとても待てないと言う。この年頃の子供の才能はただの一日も無駄にできない。2ヶ月の感傷は子供の選手としての可能性を半年は遅らせてしまうと一気に説得されてしまった。
...私は苦しみの底でこのコーチの情熱と的確さに共感と信頼を抱かずにはいられなかった。キリでもみこむようにして一気に核心に迫る。

子供を何かにしようと思ったら6才から10才までで勝負はほぼつく。もう既に2年を無駄にしているのだ。これからの2年は正念場だし最後のチャンスだ。
「王立舞踊学校は...」
「ただちに止めるべきです。あんな所は時間の無駄です」
「あちらのチームではとてもかわいがられて良くしていただいているので」
「あの子が不憫過ぎます!あそこではあの子のせっかくの生まれ持った条件を延ばすことができない。義理のために子供の才能も殺してしまう!?」
...息がつまるような急展開だ。言っている事はことごとく正しい。

「月曜に待っています。訓練は毎日4時から7時まで。この春の選手権にはタマーラは私のチームから個人で出すことにしますからね」
挙句に選手権には敵チームから出場か...私は気絶しそうに気分が悪くなってしまった。

「....火曜からにしていただけます?月曜にはあちらのチームにきちんと挨拶に伺いたいので。」
「では、火曜日から。お気持ちはお察しします。心から...」

 この週末はずっとなんて挨拶していいのか分らずに過ごしている。

見限ろうとしているチームで、私はアーティスティック・コーチとして実際に参加し始めていたのだ。
...こんな急な変わり身を過去にしたことがあるだろうかとずっと記憶を辿ってみている。自分の主旨にはそぐわないからこういうのは一度もしたことがない。ああ、子供のためならどんな泥でもかぶってしまうのだな、と思うそばから苦渋に満ちてしまう。

 新チームでは振り付けと芸術面での協力もする。この春の選手権ではそっくり敵側に寝返るような形だ。
なんということになったのだろう...もう王立舞踊学校なんかこのすさまじさの陰になってしまった。あんなものはやめて当然、という価値に既に成り下がってしまっている。
  
 子供はと言うと、このチームに通うことになんのためらいも不思議も感じていない。目を見張るような粒よりの選手達が30人もいるのだ。私でさえその壮観さに心を奪われたのだから、子供の心にはもうこれしか映らなくて当然かもしれない。

 明日は...誰の顔もゆがむことなくお別れが言えたらいいのだけど。

--------------------------------------------------------------------------------
[26] 王立舞踊学校ー退学させる? Date:2003-01-10 (Fri)


冬休みが終わって今日は王立舞踊学校の一日目だ。
私の8才の次女はここの一年生で、新体操と水泳も本人の意志で続けている。
私は沢山の稽古事をさせるのは反対だ。ただし本人が情熱家で意欲に溢れている場合は止めない。

 新体操はかなり厳格でレベルの高いクラシックバレエプログラムが組まれていて、こちらの講師の方が若くて熱意と情熱に溢れてい、王立舞踊学校の教授よりずっといいレッスンをする。しかも選手権がかかっているので普段のレッスンでも鬼気迫っている。二人の講師ともにビクトル・ウジャーテバレエ団の団員だったから、私は全面的に信頼している。

娘は王立の方をやめたくて仕方ない。時間がどっちもぴったり重なっているのでどちらかをやめないといけない。同じクラシックバレエでもここまで違うか、というくらいにそのレッスンは雲泥の差なのだ。

王立の方は初めてバレエをやる子、舞踊科に入りたての一年生ばかりだ。一方新体操の方のバレエは私の娘は四年の基礎があるので高学年の選手のクラスに入れてもらっている。既に2回転ピルエットやアラベスクやアテイテュードのフイニッシュが出て来る振り付けに四苦八苦する楽しみがある。

王立の方は秋からこっち、ワンちゃん猫ちゃんのポーズ、バレエ基礎の一番とクッペの正しいやり方、なんていうのを一歩も出ない。もう4ヶ月も犬猫だ。
「プロフェソール、お願いです。いつ本当のバレエをやらせていただけるのですか?」とある日たまりかねて聞いたというのだ。気難しい先生だから私は驚いた。
「それで?何て言われたの?」
「お返事がなかった。きっと気を悪くされたんだと思う。もう私言わないから...」

 今日も新体操の方ではばりばりのバレエが2時間もあるというのに王立舞踊学校に行く無意味に子供は打ちひしがれていた。

...子供の父親はあんなくだらない所は時間の無駄だからやめさせろと言ってきかない。夕べから私もいよいよ決断の時か、と思い悩んでいる。

私の知る限り、外部の予備校に通って大人になってから王立舞踊学校の試験を通った人はいても、一年生から実際に正式な生徒として全過程をこの舞踊学校で終了した日本人は一人もいないのだ。

娘はこの学校の試験に二番で入った。この先10年の専門過程の学費がすべて無料という条件をいただけている。
ああ....惜しい...。
ケチな母親は惜しくて仕方がない。
ピアノの上に飾るとなんだか嬉しいだろう卒業証書と全過程奨学生だったという栄誉に目が眩む。
悲しいかな、浅はかな母は逡巡する。

自分のスクールの子供クラスの主旨なんかにはばーーんと偉そうな事を言っておきながら、王立という輝かしい名前(だけ、なのに)とお城のような威厳ある学校と(見かけ倒しなのに)奨学生という肩書き(つまり無料)が惜しいのだ。あんなところは他にやる事もなく、暇を持て余し、大した才能もない人がだらだらと10年行くところなのだ。

 5月で一年目が終わる。どう逃げてもその前に私は決断しないといけない。
新体操の方からも王立をやめさせてこっちに専念して欲しいと言われているのだ。
どうしたって子供の意欲と素質はこんなところで10年も埋もれるようにはできていそうにないのだ。もう一人、もうちょっとだけ凡庸な娘がいたら面白かったのにな、などといじましく考えたりする私です。

そう、半ダースくらい欲しかったですね、娘。


--------------------------------------------------------------------------------
[25]  子供の背骨について Date:2003-01-05 (Sun)


一か月前になるだろうか....末娘のトレーニング中に背骨が伸びないのを見つけた。脚を投げ出してアン・オーにすると腰のすぐ上の辺りがわずかにひずむ。どんなに伸ばすように指導しても伸びにくい。
もしかして生まれつきの欠陥かと心配した。

新体操のコーチ達は皆首をひねる。
そんな細かいところまで見たことがないので他の子供達がどうだか思い出せないと言う。
試しに同年の子供達も並べてみたが多かれ少なかれ伸びにくい。
でも私の娘の方がもう幾分ひずんで見えた。

ついに体育館付きのスポーツドクターにお出で願った。
この先生も今まで気をつけて見た事がないからなんとも言えないと首をひねる。長い医者稼業でもそこまで気にした事がなかったと言うのだ。でもそれにも関わらず専門医なんかには診てもらわない方がいいとアドバイスされた。
医者なんかにはなるべくかからない方がいいと言うのだ。
一理あると笑ってしまった。そしてこの先生は信頼できると再認識した。

 一昨日のバレエレッスンで親友のマリア・へスースに相談してみた。
この人は新体操選手のためのバレエ講師をしている。出身は有名バレエ団のソリストだから信頼している。

「どーれ、タマーラ、ちょっとそこに座ってみて」
「背中は大きな木の幹だと思って。一つ一つのげんこつでつながっているんだな、て思って。そのげんこつはなるべく離してやらないとお空に届かないのよ。もっともっともっと離してやって。うん、そう。でももっとよ。じゃないと届かないのよ」「噴水は下の方が狭くて、ふわーーーっと開くでしょ?あんな感じにやってみて。腕はだから噴水の水の....」

....この、魔法で見事に背骨がそうあるべきように伸びた。
私は舌を巻く思い。....しかし若いのに(まだ23才)よく子供を扱い慣れていると感心した。それにこの根気のよさったらない。私はとてもここまではやろうとしない。(何せ自分の娘だからいつももっとぞんざいだ)

 ともあれ生まれつきの欠陥でないことが分かってほっとした。

それにしても子供というのは体を伸ばすこと一つ取っても、やった事がないから何か頭にちゃんと描けるイメージを与えてやらないと理論では駄目なのだと言うことをまざまざと認識した。その代わりちゃんと絵を与えてやると素直になぞろうとする分、大人よりずっとましなのだ。

 それから今更だが、子供は体は柔らかくても筋肉が出来ていないから支え方がまだわからないし、力がない。

「しばらくそうやって正しい姿勢をしてみてとっても疲れちゃったら今度はこうやるのよ。そうそう。そうして休んだらまたやってみるのよ、分かった?」

努力の仕方とリラクゼーションまでちゃんと教えてやっている。マリア・へスースの的確さに見直す思い。ちょっとのんびりした物足りない講師だな、という感想を持っていたのだけどそうでもないと新発見もした。

 何につけても何かをきちんと仕込もうとしたら親だけはダメだ。特にその道の専門家の親はスーパーバイザーに徹して、直接の指導は別の専門家の腕に任せるのが最も望ましい。

--------------------------------------------------------------------------------
[24] 累積効果について Date:2003-01-03 (Fri)


ここ数日突然、子供が2回転ピルエットをするようになったので少なからず驚いている。回転はまだアンデオールをやっと習うか習わないか、という段階だが、人がやっているのを見ていてたまらなくて自分でやってしまっている。

 まだ自己流できれいなフオームではないのだけど、子供が自分の心の美意識に訴えかけるものに出会った時、基礎とか順番なんか無視して情熱的にそれを習得しようというエネルギーはすごい。

教師としてはこれを押しとどめてはいけないと思う。こういう機会を上手に捕らえて、子供の意欲が燃えているうちに正しいフオームに少し直しておさらいさせるとあっと言う間にものにする。意欲的な子は飛び級でどんどん教えるべきだ。

 子供は、トゥールとダブルピルエットの他に、フェッテがとても気に入っている。この際だから回転の原理と共通について教え込んでしまう。興味が湧いて来ているうちは、砂が水を吸うようにして熱心に理解しようとする。こういう学習過程を如実に目の当たりにする嬉しさは、母親の特権かも知れない。
ここまでで「子供」というのは私の8才の次女で、私は教師としての実験的な目で学習過程を観察している。

 クリスマスで学校の休みが6日まで続く。途端に新体操は六時間トレーニングに突入している。午前と午後、昼食の休憩に2時間半をはさんで効率良くトレーニングが行われている。7、8才の子供達は、こんなものはなんでもなくこなしている。
子供というのは元来、とても長い事いろんなことをして飛び跳ねたりよじ登ったりして遊んだものなのだ。だから六時間のトレーニングなんて凄いようでいて実は何でもないのだ。
 そうして時間も長いが、こうやって集中して訓練されているとあっと言う間に色々な習ったばかりの技が出来るようになって行く。目の前ですぐにやってのけたりする気持ち良さと言ったらない。子供の能力というのは私達の何倍も素早い。あらためて驚嘆する。
 それにしても、累積効果というのは本当に特別の注意が必要だ。
何年、踊っているか、なんていうのは関係ないのだ。どういうテンションでどういう密度と反復でやっているか、というのが全てだ。
週に一回、10年の人は、週に三日三年の人に劣っても仕方がないのだ。
何年、ではない。累積効果の上がる方法を取るのが一番の近道なのだ。

--------------------------------------------------------------------------------
[23] オペラ座の怪人ーロンドン観劇の巻 Date:2002-12-23 (Mon)

先週、仕事でロンドンに寄った。
 セビリアから2時間ちょっとなのに、まあ、なんという違いかといつも思う。冬に街をうろついたことがないので、どんなかな、と思っていたが予想を上回る寒さに気がめげてしまった。
第一、日の暮れるのの早い事といったらない。

3時にはまだお天気が悪い、という感じだけだったのに4時にはもうとっぷりと闇に沈んでしまった。7時過ぎまで明るいセビージャは夜でも出かけよう、買い物しよう、用事を済ませようという意欲に満ちていられるが、コートから出ている耳、頭、手が、帽子や手袋ってこういう時のためなのね!と思わせるようではふらふらする気がなくなる。

 ハロッズデパートはクリスマス前できっと楽しいプレゼントに事欠かないだろうと思いきや、ちっとも楽しくなかった。デイスプレイもセビージャより数段劣る。購買意欲がゼロになってしまった。

 コベント・ガーデンで白鳥湖だな、と思って駆けつけたけれど平日のこんなに寒い日のぱっとしないただの火曜日だというのにソールド・アウトだと言う。庶民の観劇の意欲に圧倒される。

自慢じゃないけれどたとえ暇があっても、火曜だの月曜に劇場に出かけようなんて根性は私にはない。
セビージャのオペラ座が家から5~7分の至近なのに行かない物ぐさだ。車でドアからドアだって言うのにねえ....イギリスの方達って文化水準高い。失業だなんだと言っても凄いなぁ平日に、と感嘆。

重い夕食には全く興味がないし、買い物も好きではない私はやっぱり何か見てお勉強しないと!ていうのでこうなったら評判のオペラ座の怪人でも是非!
というのでロンドンの目抜き通りをまるで自分の庭のように突っ切って行く。
開演まで30分を切っているんだもの。
またもやレッスンで鍛えた筋金入りの脚で飛んで行く。
車なんかに乗ったら渋滞のロンドンでは金輪際間に合わない。

 ハーマジェスティ劇場は本当に素晴らしい。
素晴らしいけれど賢く買った、これしかないと言われた席はなんとまあ、天井桟敷も天井のこれ以上の天はないと言うほどの呆れたつまはじき席。

案内係りの男性に「ねえ...これしか本当にない?」と嘆きのつぶやき。
ちょっと乗り出すと自殺志願のようにまッ逆さまになりそうで舞台なんか見えやしない。
「一つだったら絶対に差額を出せばある筈ですよ!」て言うけれどもう開演二分前。1階まで降りないといけないというから4階席から駆け下りるめんどくささにぞっとしてしまう。...でもこれから3時間もこの自殺席って...
はぁ、つくづく鍛えた脚のお世話になるなぁ、と思いつつ交渉に。

 その甲斐あって劇場で一番というような特等席が出てきた。ローヤルフアミリー席。いやあ、これは差額戦争に駆け降りただけはありました。目の前で次々と物凄い仕掛けが展開されるのだもの。
劇場の天井からシャンデリアはガーーーー!と落ちるわ、スモッグは出るわ、花火は点火されるわ、回り舞台に斜め梯子の誘拐場面、凄い凝り方だ。
いやあ、ご立派!
マドンナは本物のバレリーナでトウシューズで軽々と踊る。踊るしソプラノでうわぁーー!と歌う事もできる。うーーーむ、やるじゃないの!
素晴らしかったです。

...でも相次ぐ旅行で時差がもろに出ている体で3時間物は辛かった。
後半はもう目が開けていられないくらいに大変でした。舞台はやはり2時間が限度と言う気がしましたよ。



--------------------------------------------------------------------------------
[22] 華麗なるローラ Date:2002-11-28 (Thu)



 うちの家族は全員、セビリアのスポーツクラブの会員になっている。
これは1931年の設立で、営利目的ではなく、会員によって運営されている由緒あるクラブなのだ。オリンピックの引退選手やもともとは水泳の選手が基軸になって始めた。
CLUB NATACION DE SEVILLA と言ったら知らない人がいない。
この、年中なんでも休みの国にしては珍しく、年中無休。朝8時から夜11時近くまで土日祝日たがわず開いている。
ここなくしてはうちの生活は不毛になってしまうくらいだ。

 凄い会員数の筈だけどいつも割と閑散としている。仕事の退社時間にさえかち合わなければプールなんか一人の時すらある。淋しくて早く切り上げたくなるくらいだ。
マシンジムも居ても2、3人。好きなように何でも思いきり使える。体育館もある。天井の高い空間でやる必然もあるので私は毎日のようにここを縦横に使っている。大抵一人占めだ。たまにバスケのチームとかち合うけれど主将が私の終わるのを待ってくれたりする。ピルエットの練習をしていたりすると誰かが白鳥湖をハミングしたりして可笑しくてバランスを崩しそうになることはままある。

 お年寄りで健康のため、というような人でも、ばりばりやっているのが特徴で日本のプールみたいに腰だけ浸かって歩いている人は一人もいない。

 ここに長年顔見知りのローラという58才のめちやくちゃに明るい女性が来る。堅太りっていうかぱちんっとお肉の詰まった感じのはつらつとした人で、これがすごいプログラムをこなす。(秋葉原スタジオに彼女のトレーニング中の写真が飾ってありますよ!)

 筋トレなんかは前から私のやり方がダメだと言っていたけれど、この人はただの主婦だからどうしても意見を尊重する気になれなかった。

朝ににんじんのジュースを欠かさず飲み、スポーツの後にはオレンジ絞って飲み、筋トレとプールの1500メートルを泳いだ後に自宅まで何キロもあるのに来た時と同じようにスポーツバックを肩にかけて歩いて帰るっていうんだから脱帽。
 家に居る時も必ず何かしらのエクササイズをしながら家事をこなし、テレビを見ていてもだらっと緩んでいることがないと言う。
 運動の後は各種クリームなどを鏡の前に広げてマッサージや美顔をちゃんとやる。トラの足の粉末かなんかの入ったクリームを勧められて私は爆笑したことがある。
そうやって人の言う事きかないと酷い目に会うわよ、なんてにらまれていた。

これだけやるとどれが効果てきめんなのかはわからないけれど、ものすごく立派なプロポーションをしている。脚は私の勝ちだけど上体はもしかしたらあちらに負けるんじゃないかと思う。
この人、もうすぐ還暦で孫までいるのに!!!
主婦で仕事は他に持っていない。

 世の中、こういう素人もいる。おちおちできないって焦る私です。

--------------------------------------------------------------------------------
[21] 明日はアンダルシア選手権ー新体操団体の部 Date:2002-11-24 (Sun)

 最近、スポーツねたが多い。
バレエはどうしたんだと言われそうだ。

これはBBSでお答えしているからちょっと許していただいて、筋肉、トレーニング、食事と健康、という題材はみんなここで扱うので当然スポーツもこちらに出て来る。
 スポーツ界からバレエに転向というのは意外と多いが、選手がフラメンコへ、というのはあまり聞かない。

この間はフィンランドのアイスホッケー選手からコンテンポラリーに転向したというダンサーとお近づきになった。どうして、ああいう男っぽいスポーツからダンスに?どういうきっかけで突然ダンスに目覚めたんですか?と聞くと
氷の解ける夏の間に(解ける?氷が良くなくなる、だったかな?)柔軟と身のこなしを兼ねてダンスがいいぜ、という仲間の誘いに、ふうーーむ...と乗ったのが最後、どんどんあっちに逸れて行ってしまったのだそうだ。

野球の選手は息抜き、レジャーと言ってもやっぱりゴルフなんかに行って技を考える。違う種目で思いがけない工夫を拾って来ようとする。

ホッケーもダンスに行って見るのは、身ごなしがスムースでないといけないスポーツとしては当然の発想かも知れない。

フラメンコの私は、少林寺拳法に着眼して久しい。いつか習いたいな、と思っているんだけど....いつ?
スペインでもあるのかなぁ...
あれは実に美しい。

スポーツチャンバラの師範とは親しくしていただいている。
色んな工夫もマメに頭の中にフアイルしている。

余談ながら私の弟は剣道、柔道、スキー、テニスでは師範とかインストラクターの資格まで行って、挙句に趣味ではボクシングジムにまで通っていたみたいだった。
なんだか包帯がいっぱい干してあるからどうしたのかと聞いたら今度はボクシングだって言うので呆れたのだ。
姉への抵抗か無関心のためにダンスにだけは彼は足を踏み入れていない。

そう言えば、彼の試合なんかに行ったためしがない。ご招待も受けたことがなかったと今気がついた。身近な人というのは常にこういうぞんざいな事になるものなのかも知れない。ただの弟なんかに技の工夫を聞いてみる、て事もそう言えば発想した事がない。驚くべき無関心!私とした事が。あはは、と笑ってしまおうか。...外の名人にばかり低姿勢。

 明日はアンダルシア選手権がマラガで開催され、私もご招待いただいている。先週から水泳が始まったけれど、新体操のリーグも明日から幕開けなのだ。
ただし明日は団体の演技で、個人種目はない。
私がお手伝いしているセビリアのクラブは来年三月の個人大会に出場で今回の団体には代表選手は出さない。

マラガ県はここセビリアから車で3時間ちょっとの行程だ。
トレーナーとコーチ、有力選手何人かで分乗して出る。下の娘も一応、来年は個人で出るから見学に同行。

来年の個人競技会では、私は振り付けを担当しているからこの間から勉強に忙しい。ヨーロッパ選手権ではアリーナ・カバエバなどの世界トップレベルの選手をじっくり見せていただいたけれど、国内リーグを見るのはこれに関わってきている事を更に実感させられる。

三月の選手権には、音楽担当もする。
選手のための音樂を作るのだ。
がぜん、録音スタジオでエンジニアと指しで音と効果の思考錯誤が始まりそうだ。なんだかえらいことになってしまったな、ていう感じと同時に、面白くて、可笑しくてニヤニヤしてしまう。
先週はチームのコーチとしておそろいのジャージーの採寸までされたのだ。
ああいうの、そのうち着てバスに揺られて行くらしいのだ。く、く、く...
レオタードのが色っぽくて好きなんだけどな。

 と、言うわけで明朝の5時に目覚ましをセットしたところだ。
でも、寝る前に小一時間だけスタジオにもぐって死の舞踏をおさらいしたいと思っている。なんだか楽しくてやめられないのだ、これとタラントが。

--------------------------------------------------------------------------------
[20] 今週からリーグ開始 Date:2002-11-17 (Sun)


昨日の土曜から私の長女で水泳の選手が今期のリーグ戦に突入した。
一年間競技会で記録を出して行くのだが、その今年の第1回が昨日だった。
朝の7時から大会に出かける。昼を挟んで午後の部に入り、夜までかかる。

今日は決勝戦を戦っている。

先週は私が新体操で、今週はこの子がリーグ開始って、なんていうか気の抜けない家族環境だ。笑ってしまう。

子供は現在南スペインのチャンピオン、全スペインで6位なので、あと2年でお上に召し上げられてしまうかもしれない。
つまり国の英才オリンピック候補として14才から全国の見込みのある選手を全寮制の国営学校に入れて徹底的に鍛える制度がスペインにはある。

マドリーとマラガにこの学校は存在する。
抜群のコーチ陣の手で朝の六時から鍛えられるらしい。学校も中にあって勉強とスポーツがうまくコンビネーションできるようにしてある。しかしどの道とても厳しいのは確かだ。

水泳だけではなく、新体操も他のスポーツもここに種目別に徹底したコースが設けられ、国が代表選手を力を入れて育てている。
こういうのは、日本にもあるのだろうか?
聞いたことがないのだけれど、どなたかご存知でしたら教えてください。
スペインではこの時点から一切の費用は国が持つらしい。

毎年、全国のリストアップされている選手の健康と成長の厳しいチェックがあり、うちの娘などまだ12才になりたてなのに24時間心電図なんかを取られている。一人につき12ページくらいの詳細な身体能力の記録が出される。見ると驚き感嘆する。ありとあらゆる筋とかその辺りの柔軟性とかみんな数値で出ている。親の身長と体重もだ。...つまり私のも。けれど踊りが上手いとは書いてくれてない。残念だな。

 下の娘がどんどん新体操に進むとやっぱり14才でお上に召し上げられてしまう。まさか!とは思うけれど、何事も心の準備が大切だから、もしも二人がスペイン国籍になってしまったら、私も年貢の納め時でスペイン人になってしまおうと考え始めている。

--------------------------------------------------------------------------------
[19] 新体操ヨーロッパ選手権 Date:2002-11-14 (Thu)

なんだか息もつけない忙しさだ。
ずっとエッセイの更新もできていない。

先週は新体操のヨーロッパ選手権がグラナダで開催され、お招きいただいたので生まれて始めて世界レベルの競技会を見ることができた。

まず、
舞台人の常識から言うと考えられないあっけなさで突然始まってしまった。
まだ観客がわさわさ入ったりうろうろとしているのに、なんという挨拶もなしにいきなり選手が演技に入っている。
当然なのだろうけれど照明が落ちるわけでもなんでもない。
あらら...いいのかな、いいのかな、といううちにウルトラ級の技がどんどん出て来て慌ててしまった。まだ人々が座るかどうかという間に終わって次が始まる。
....淡々としてますなぁ、さすがスポーツ!
これが第一印象。第一驚愕。

その次は、誰が出て来てもおよそミスを犯さない。
すごいレベルだと深く、深く感じ入り、その完全さの裏にある彼女達の日々の鬼気迫る努力と執念と情熱の限りを思いやって早くも目が熱くなってしまった。もう、胸に何かがつかえて苦しいくらいの演技の連続。

この中から選ばないといけないの!?...は選挙の時に持つ感慨だが、別の意味でまたそう思った。
この中からメダル3個だけ?
酷いんじゃないかと思った。とても優劣がつけられない。

新体操はスポーツに類するには厳しいものがある。感性とか芸術性に属する採点になると誰が審査員の席に座っているか、で左右されてしまう。この結果に甘んじて次のチャンスに向かって努力するのは苦しいに違いない。
優劣が付け難いのだもの。

私が新体操のトレーニングに関わるようになってすぐに思ったことは、踊り手はこの人達に何をもってして一石を投じることができるかな、だった。

練習量がものすごいのだ。

平均7時間というのは普通の労働と同じで当たり前みたいだけれど、正味7時間確保するには文字通り寝ても覚めても、という生活になる。
バレエレッスンだってバレリーナ並にやる。
シルビー・ギエムのポーズを始めて見た時はびっくりしたけれど、あれは選手だったらみんなやる。脚は耳までじゃなくて耳を超えてあっちの耳まで行く。
ついでに言えばシルビー・ギエムは新体操の出身だそうな。

こう言ったからと言って頭を堅くしたバレエ愛好家は傷ついて怒ったりしてはいけませんよ。私だって石器時代くらいからバレエ愛好家なのだから。
自分の専門意外の事にもちゃんと敵愾心なく、感心し感動し、理解しなくては。
それで、どの演技にもあの、フェッテが出て来る。ダブルフエッテは朝飯前、トリプルビルエットで決めたりしてすごいのだ。床はじゅうたんだから木の床より回転は摩擦が多い。揺るぎ無い演技の連続で、トウシューズも履いていないのにポアントで立ちあがる。あ!!と思った。
重力を読んで計算してあるに違いない。
一部のスキもなく訓練してある。

メダル3個に入らなかった人達がどっとダンス界になだれ込んで来たら、私達は防戦できるかな、と思ったりした。

あっちはスポーツ根性女で、こっちみたいな感性はないわよ、と安心するのは浅はかだ。とてもとてもエレガントでガラス細工のように美しい演技をする人はざらにいた。

閉会式の時に113人のヨーロッパ代表選手達が一堂に会した時、ああ、こんなに素晴らしくって、メダルなしで帰る無念はいかばかりかと、又胸が苦しくなってしまった。

最初からなんだか泣きそうなまま5時間、二日間、ぐったり疲れてサンドバッグのようになってしまった私でした。

--------------------------------------------------------------------------------
[18] バレエー着る物、履く物 Date:2002-11-02 (Sat)

 クラシックバレエでは滅多に裸足になれとは言われないけれど
コンテンポラリーとモダンではバレエシューズを履く方が稀だ。

ほとんどの場合、ソックスを履いてやっている。
厳しい先生になると、一体何を考えている?舞台でもソックスで出るつもりかね?と言って裸足にさせられてしまう。

これが結構痛かったりして私は音を上げたものだ。
ターンは裸足だと結構難しい。すべらないから3回転なんていうのは本当にきつい。一回でも嫌になる。

 冬の寒い朝なんかに裸足になると「冬はつとめて。やうやう白くたなびきたる....」はこんな感じかえ?みたいになる。
いと、おかしくない!やめれば良かったと内心後悔する。
この分野はお勉強、のつもりだから必死になれなかったりするのだ。誠に情けないがこれだったらフラメンコ靴のがいいな、と恋しくなる。

 しかし、クラシックのレッスンの後にモダン、コンテンポラリーのダンサー達が入って来ると圧巻だ。

みんなすごく猛者というか汚いというかアンチ・クラシックというか反抗児的格好で来る。ぼろぼろのシャツを更に切り裂いたようなのと、スパッツ、耳には沢山のピアスで丸坊主に頭を刈り上げてあったり、ちらりと見かけた舌にピアスが刺さっていたりするのだ。
 クラシックバレエのお嬢様バレリーナとは大分違う。

 みんなあれでも元はクラシックをやっていた人がほとんどなのだけどあっちに転向すると途端にスラムっぽい感じに変装するみたいだ。

 クラシックバレエにしてもプロは良いものを着ていない。結構切り裂いたシャツを粋な感じに着流していたりする。バレエシューズはぼろぼろの事が多い。あんまりほころびがひどくなると上からソックスを履いている。私は割とこれが好きだ。ぼろぼろのシューズは柔らかくて自在だ。

最近すごく気に入っているのは、新体操のシューズだ。普通のバレエシューズの半分しかない。かかとにかけては何もなくてゴムで止める。
これだとコンテンポラリーとクラシックの中間で滑り過ぎず、きしみもしなくてとても良い。松脂が必要なくらいに滑る床でも程よい感じで踊れる。
 体育館のような広い、床の磨きあがった滑る所で自習する場合は、このシューズがとても調子良い。半分だけあってお値段もとても安い。
それにソールがないも同然なので、甲が良く出る。大変ストレスが少ない。
これは日本ではバレエの人は履かないのかしら?
スペインの専門店ではクラシックの人でも愛用している人が結構いると言う話だったけれど。

 是非お試しください。甲の感じが嬉しくなってしまうし、より大地が身近な爽快さがあります。


--------------------------------------------------------------------------------
[17] ダンスー積み上げて行くものについて Date:2002-10-29 (Tue)


バランスの取り方に苦労している人は意外と多いものだ。
 プロといわれる踊り手でも真っ先にあ!と思うのはコントロールの退化だ。
えーーー!?退化しちゃうんですかぁ?と驚く声が聞こえるようだ。

そう、退化してしまいますよ、負に向かって何にも努力しないのにあっと言う間になんでも...こんなつまらない事、保証しないでよ、て恨まれそうだ。

 暫く公演や舞台で忙しくて(ここが不思議なところですよね、踊っているのになんで?と)まともなレッスンができないでいるとすぐにコントロールが悪くなる。だから内心、早くこれを終わって総合練習に取りかからなきゃ、て思いながら振り付けを踊り込んだりしているものなのだ。

 舞台でやる事と普段潰さないといけないレッスンは違うので、素晴らしい演技で決めていても、別の使わない何かがダメになる。
だから舞台と舞台の間は休憩ではなくて、失った物を素早く取り返す時間になる。取り返しつつ、得た物を拡大させたりするわけだ。
そうしてダンサーというのは成長して行く。

 あんまり過酷なレッスンや舞台のための踊り込みが激しく続くような時にもコントロールが悪くなる。精神的に追い詰められていたりするからだ。
単に疲労しているということもある。
なかなか難しいところだ。
判断を的確にして自分への処方箋を書く。これがプロの秘訣かも知れない。
そういう時にどうしたらいいかが経験で分っているからだ。

これはちょうど柔軟をしていて痛みが走る時、GOサインかSTOPサインかが経験で分るというのと似ている。
ダンサーはどの痛みが成長のためで、どの痛みが危険信号か、痛み方の違い図鑑みたいなリファレンスを蓄えてある。

この感覚は人に教えてあげる事が困難だ。
これこそは一人一人が経験として自分で積み上げて行くしかない。

--------------------------------------------------------------------------------
[16] トレーニングの盲点 Date:2002-10-24 (Thu)


昨日はついに新体操の選手を3時間も見て疲労困憊してしまった。
 もうすぐ選手権に向けて振り付けに入るので基本的な訓練とか、動きを私も一緒に勉強している。
勉強しつつ、選手のフォームなんかを直している。
こういう事はバレエと基本が同じなのだ。
ただ、細かいトレーニングで普段鍛えていない盲点が明らかになったりする。
思わぬ拾い物をした気分だ。
緻密にやっているようでいて案外気の付かない事もあるのは驚きのようでもあり、嬉しい。こうして生涯勉強して行くのだな、と思う。

微妙に違うフイニッシュなどがあり、そこの所をコーチに確認しながら
選手にアドバイスしているからすらすらといかない分、疲労してしまうのかもしれない。
アクロバット的な技もどう決めないといけないかは良く理解できる。
感嘆したり直したり、なんだか精神的にも忙しい。
口がきけないくらいに疲れてしまったな、と意識した時には3時間経っていたのだ、なある程...当然だ、と納得した。

しかしスポーツ系のトレーニングはやっぱり凄い。
舞踊がこれに劣るとは言わないけれど、これくらい続けざまにやると累積の効果というのが顕著だ。

 新体操は日本ではどうだか知らないけれどスペインでは引退が本当に早い。
10代の後半には引退してしまう。
激しくてやれないというのの他に、グラマラスな体型になって来るとあれはやれないものなのだと思う。

 日本人の清楚な体型は、こういう所で真価を発揮するかも知れない。

スペインの多くの女の子達は一般に早熟で、精神的な早熟はともかくも、小学校の高学年頃から胸もお尻ももりもり大きくなってしまう。
そうなると新体操はもとより水泳もみんな記録がダメになって来るらしい。
割と少女体型のまま、すっきりとトレーニングできるうちのが伸びるみたいだ。あれこれ考えたり反省したり、工夫したり、結局の所自分の芸のために勉強させてもらっているに違いない。

違うジャンルから自分の専門を見直しているとくっきりと名案が浮かんだりするこの頃です。小さい子供の筋肉や軟骨の心配もするようになって勉強するテーマも広がったみたいだ。
.....しかし、疲れるぅ.....

--------------------------------------------------------------------------------
[15] 激辛の 記憶力について Date:2002-10-17 (Thu)


バレリーナの記憶力の確かさと言ったらない。
 記憶力というより集中力と言った方が正確かも知れない。

 私があちこちで出たプロのためのバレエ・レッスンでは、バーレッスン一つ取っても結構複雑で、もうそれだけで一つの作品として通じるような小品に上がっている事が多かった。
「これは大変だ!」と言うので額の辺りを冷たく緊張させながら必死に覚えるのだけど、お手本というか説明を聞いていざ、エクササイズをやろうとバーに向いた途端に始めの部分が頭からぼろっとおっこちてしまって焦る。

焦った途端に中段もばらばらっと解体してしまい、見るも無残な姿になるというのはよくあったな.....思い出しても冷や汗が出てしまう。

先生、見ないで!という気持ち。

フラメンコクラスで良く私の生徒がそういう心理になっている、あれを私もバレエで経験する。(あはは...見ないでって願っても真っ先に目の端に映ってしまうものなのだから無駄なのですが、本人は必死だ。)

 あるフランスの有名な舞踊家のレッスンの時ほど慌てた事はなかった。
バーレッスンも凄かったけれど、振り付けの時間になると一曲全部振り付けてしまうのだ。
それで、では、て言う。
あなた達どうぞ、である。

えー!?とたまげているとみんな決死の覚悟でどんどん踊る。
難しいフイニッシュなんかもちゃんと覚えていてふらついても弱気を見せないで潔く戦ってしまう。
全く、舞踊家というくらいの人達はこれくらいの謙虚さと度胸と必死がなかったら嘘だと思った。
これでやっとスタートラインなのだ。
芸術性とか感情移入とかそういうものはこの基本の上で問題になる事だ。
まずはこれは身体条件と同じくらいに当然持っていないといけない資質なのだ。踊りをやる人はこの気持ちがなくてはダメなのだ。

....というのがあらためて感じた事だけれど、自分は記憶するという訓練を長い間していないという事実にも感嘆してしまった。
これは私の専門のためなんだな、と感慨深かった。
 フラメンコは即興が命だし、ここに才能のきらめきを出さないといけないのであらゆる状況に即答できるような訓練を積んで来ている。暗記するという事とは対極になる。暗記しない、あらかじめ用意した事に頼らない、という訓練だ。
......時々バレエでこてんぱんにやられるのはとっても刺激になる。
もしかして頭が相当悪いんじゃないかと焦るのは辛さを伴う非情に辛口の激辛というくらいの刺激であります。(爆)


--------------------------------------------------------------------------------
[14] バレエ の上達についてー休息と集中力 Date:2002-10-14 (Mon)


 ここ数日のコントロールの良さはどうだろう?
なんだかきつねにつままれた思いだ。
慢心してガタッとツキに見放されると嫌なので、気がつかないフリをしようかと思うくらいだ。つまり自分の体のコントロールの良さに。

 このところあらゆるエクササイズで上達が見られる。
こんなに高く脚が上がるわけがないから、もしかして腰が入ってないのかな、と疑いの気持ちが湧いたりする。
ピルエットがとても調子がいい。
いつも危なげないのは2回転だけれど、昨日はぼうっとしていて4回になりそうだった。

ぼうっとしている、というのは時に大切だ。

意識を集中させると上手く行く場合と、かえって失敗する場合がある。前者は主に力が入り過ぎるためだけれど、何でできないだろうと焦っていると益々気持ちがいらだったりする。
あるいは本気を出してここ一番、と集中すると気が引き締まってバランスが決まるという場合もある。....中々厄介だ。どちらとも言えない。

理論と理屈の他に微妙な匙加減が加わるのだ。
これが意識的に使い分けられる人がプロなんだろうと思ったりする。そのためには自分の肉体に精通していないといけない。

 バレエは私の超専門ではないから、長い芸歴の中で何度も中断している。このところは一日も休まずにやる事にしているけれど、それがやっぱり効果を高める。累積の効果というのは絶対に自分の思惑の上を行くのだ。
ここが精進の素晴らしい、裏切りのないところだ。
やっただけの事はある、というのが。外れがないというのは勇気を喚起してくれる。

 最近アンデオールも益々外向きで、何気なくしたパッセが高くて安々としていて驚いた。ルルべキープの時間も延びて、あららら???と言うくらいだ。
秘訣は、一日も休まないためには単純化させるという事にある。
基本のエクササイズだけをゆっくりと丁寧に毎日。
バーレッスンは30分版を作ってある。
これが大変に良い。
飛行機で移動中でも絶対にやる事にしている。
誰が見ていようと構わない、と思う事にしたのだ。(嘘かも。嫌だからコンタクト外してしまうと平気)

たったの30分でもやりたくない時がある。驚くべき怠惰な性格だ。
やれる時は2時間半やる。

バーの基本というのはどこででもやれてしまうのだから是非実行してみてください。....と言われてもこれが中々できるものではないのだけど...
効果は保証しますよ、と明るい希望だけは差し上げたいな、月曜だし。
今週も楽しく過ごしましょう!

--------------------------------------------------------------------------------
[13] 新体操ーアーティスティック・トレーナー&コーチ Date:2002-10-08 (Tue)


凄い題がついた。
一体今度は誰が登場だ!?
はい、このタイトルが昨日から私につきました。
えーーー!?あなたにぃぃぃ?

 もう3ヶ月も前から勧誘があった。
新体操のしの字も知らないのに、あっちのコーチはやれる!と断言する。
手伝って欲しいな、振り付けもやって戴きたいな、選曲にご意見ない?アンダルシア選手権に貢献して欲しいな....

とんでもないです!....逃げ回っていた。
勿論これは本心だ。
競技会一つ見に行った事がないんだもの。
下の娘がチームに入ったのはこの夏のことだし。それも始めはほんの見聞録程度の気持ちからだった。夏休みがあんまり長いから体がなまらないようにという。

 3時間も訓練が続く。子供はへいちゃらだ。
私はその間に仕事をするには時間が半端過ぎるので体育館の別錬で筋トレとバレエレッスンをめいっぱいやっていた。
思えばどうも、その様子からおめがねにかなってしまったらしい。

そのうち選手に混じって少し訓練をーあまりのウルトラはやらないでおいてー
一緒にやり始めた。
新体操のトレーニングの他にかなり厳格なバレエレッスンも週に5時間もある。ここでは講師は望みうる最高の人をお願いしている。

そうこうしているうちにお話が上がったけれど、まさか、という気持ちとこれ以上責任ある仕事はやりたくないという本音とで逃げていた。
アルカイック・スマイルと言う手がある。

でもやっぱり専門家の手は多い程いいし、選手も30人近いと特に子供は十分のケアをしてやらないと怪我の心配がある。
この中に私の娘もいるのだ。

11月に新体操のヨーロッパ選手権がグラナダで開催される。
ついに私にも昨日招待状が来てしまった。
下のバレリーナになる筈の(?)娘は来春三月のアンダルシア選手権に初出場が決まった。
あらららら.....

この際、決心して欲しい、と言われてしまったし、どーーっと押し流されてそう言う事になってしまった。気がついたら広い体育館に大音声で
「もっと膝を伸ばして!!」なんて叫びながらグラン・ジュッテのお手本示して跳んでる自分を見出す始末。

今朝の筋肉痛が、あれは夢ではないと語っている。

何て言うか....どうしてこう、気になるテクニック、気になるアーティスト、気になる種目があると、それがこういう具合にいつも自分の前に現実として現れるんだろうか....不思議。

--------------------------------------------------------------------------------
[11] バレリーナの道...その母 Date:2002-10-05 (Sat)


 先日水曜のエッセイで触れたバレリーナに、下の娘の事を相談したいと思っていた。お互いに電話してもすれ違ってしまって(互いにクラスに出ていたりで)
もう何週間も、たったの電話一つが実現しない。

 彼女のお母さんと話す方が多くなりつつある。
今日は思い切って親の立場から彼女の留学期間をどういう決断や思いを持って過ごされたのか伺ってみた。

 誠実で率直な人で、話して下さった内容は何だかとても胸を打つものだった。やはり伺ってみて良かった。
貴重なお話が聞けて幸いでした。

私は踊り手なので普通の人よりはこの世界に理解があるし、現実も良く分っているつもりだけれど親の立場での数々はそんなにリアルには思い浮かべることができなかったみたいだ。

 「まず何よりも辛いと思うのは、あの子には子供時代がなかったと言う事です」
幼児から小学生時代はレッスンに明け暮れ、13才で留学してからは下宿先や後に寄宿舎で、何もかも自分の事をして他人の中で厳しい稽古に耐えて行ったのだから、それは言語に尽くせない苦労をしたに違いない。

しかも遠く離れた親を心配させまいと、本当の事は言わない。
自分に言うまいとしている事だけが親だからピンと来る。

その辛さはとても説明できるものではなかったと言われて、私は胸が迫った。

傍に置いて、子供の成長を見ることができない事も辛かったけれど、そうして異郷で年の割に大人びて、忍耐と克己に満ちた内気な性格を築いて行く姿をたまに見ると、なんだか親としては不憫が先立ったという事だった。

バレリーナの修行は本当に厳しいからその重労働の上に、山のようなレオタードやタイツを洗濯したり身の回りを自分で整える健気な少女が私の脳裏にも浮かんだ。
ああ、本当にきつい11年間を過ごしたのだな、と感慨深かった。

 毎月の留学費用も父親の月収を上回るものだったという。
それはそうに違いない。
親族からの援助にも頼ったけれど、また、ダメになる山のようなトウシューズやバレエシューズの膨大な経費と言ったらなかった、と。
それでもこの子がこれだけ打ち込んでいるものなのだからと、ありとあらゆる思いで頑張って来たけれど....とにかく苦しい辛い事がいっぱいで、それもあの子はほとんど自分の身に起きた苦労は話さなくてもこんなだったのですから、と締めくくられた。

 お電話を切ってから私の心はしんとしてしまった。何もかも目に見えるような思いだった。
バレエ団での事は何一つ聞かなくてこの深刻さなのだ。

 ああ、もっと踊れたらなぁ...そういう残念な、でも楽しみが70%くらいの程よい苦しみを抱きながら、趣味と言うには入れ込み過ぎ、というくらいでやっているのは、本当はとても幸せなことなんだとあらためて思った。

多くのバレエに目覚めた人は、小さい時からやっていないフラストレーションで苦しむけれど、バレエという難しい芸術は誰にとっても容易ではないのだ。

皆さん、もしも...もしも...とご自身に不満や悩みもあるでしょうけれど、踊りと巡り会えた幸せにまずは感謝して、明るく気持ちをゆったりさせてみるのも、時々はいいんじゃないでしょうか。

私には、とても身につまされた今日のお話でしたが、何かが分ったような、そういう気持ちになれました。


スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。